おもひでたなぼた
このお話は以前書いた犠牲の上の棚ぼたの続きとなっております。読んで頂いた方が状況が分かりやすいかなぁと思いますので、気になった方はそちらも読んでみて下さい(*^^*)
タイトルはこれを手直し始めた日に、某有名アニメ映画が現代を絡めてドラマ化すると知ったのでこんな感じになりました(笑)我ながらタイトルセンスが無いのは分かっております(^^;;
お義母さんに琴美を見てくれる様にお願いすると快く引き受けてくれたので、急いで入江くんの元に戻り二人で散策に出かけた。
観光地を巡ってお土産を見たり、食べ歩きする憧れデートプランが頭に浮かんだが、夜勤明けで寝ていない入江くんの事を思うとあちこち連れ回すのは忍びない。それならばと、以前来た時に一人で散歩したコースを二人で辿る事を提案すると、少し意外そうな顔をした。
「ダメだった?」
「いや。街の方に連れて行かれると思ってたから意外だっただけ。で、どっちに行くんだ?」
「えっとね、こっち!」
記憶を呼び覚まし指を差すと、入江くんはあたしの手を取って歩き出す。琴美を挟んで三人ではなく、久し振りに直接手を繋いで歩くだけで嬉しい。些細な幸せを噛みしめながら歩いて行くと、ある物が目に止まった。
「あっ、あれ!」
興奮気味に少し離れた場所にある樹を指して入江くんに訴える。だが、あたしとは対照的に入江くんは眉間に皺を寄せ露骨に嫌な顔をした。あたし自身は夢か現か定かではなかったが、結婚式で裕樹くんからのリークで2回目のキスをした場所だと知った二人にとっての思い出の場所なのに。
「もう!そんな顔しないでよ。自分が我慢出来なかったクセに~」
「……」
「ねえ、あそこで少し休もう?ね?良いでしょ?」
有無を言わさず手を引いて樹の方へと向かうと、抵抗するのは諦めたのか黙って付いて来た。あの時を思い出して木にもたれて腰を下ろすと、入江くんも隣に座った。
「うふふ。懐かしい。こうして本読んでたら、いつの間にか寝ちゃったんだよね」
「慣れない事するからだよ」
「だって、避暑地の木陰で読書とか憧れだったんだもん」
「バカな奴ほど憧れそうなシチュエーションだな」
「ヒド~イ!」
悪態を吐きながらも入江くんは、あたしの肩に頭を預けた。
「ちょっと眠る?戻って琴美起きてたら、絶対寝れないよ」
「だな。じゃあ、少しだけそうさせて貰う」
そのまま寝るのかと思いきやゴロンとあたしの膝に頭を預け横になった入江くんは、顔をお腹の方に向けてウエストを抱いて目を瞑った。
まさかこう来るとは。琴美に相手にされなかった反動なのか、ちょっと甘えたな態度が一々可愛過ぎる!
あの時のあたしグッジョブ。未来でまさかこんなハッピーサプライズが待っていたなんて。やっぱりあの時慣れない読書をして良かったのよ!起こさぬ様に心の中で幸せを噛み締め若き日の自分を褒め称えていたのだが、入江くんから伝わる温もりに誘われてついつい自分も寝てしまった。
若干の息苦しさで目が覚めたら、目の前には綺麗な顔のドアップがあった。あたしが目を覚ましたと分かると、顔は離れて行く。驚いているあたしを尻目に、入江くんは悪戯っぽく笑う。
「あの時もこういうキスなら、流石にお前も起きたかもな」
「なっ、なっ…⁈」
あたしがテンパっているのを見て満足気にしている所から察するに、完全に想像通りの反応だったのだろう。してやったりでニヤニヤの止まらない入江くんは、寝起きのあたしに究極の選択を迫る。
「どうする?せっかくだから、あの時みたいなのもしておくか?それとも、今の続きがいい?」
思い出を取るなら、あの時みたいな軽いキス。でも、懐かしさだけでは満たされなくなってしまっていたあたしは、贅沢な答えを出した。
「…一応、あの時みたいなのもした後で、今の続きをお願いします」
「了解」
今度は見惚れるくらい凄く甘い顔。あたしは、頬が緩むのを感じながら瞳を閉じた。軽く唇が重なっただけで数秒で離れて行った感触に物足りなさを感じながら瞳を開けると、あの時と違って目の前には入江くんがあたしを見つめて居てくれる事に胸が焦がれて自然と言葉が溢れた。
「入江くん、大好き」
「知ってる」
お決まりのやり取りに笑い合うと、顔が近付く気配にあたしは再び瞳を閉じて薄っすらと唇を開けた。
今も昔も、清里は何かが起こる場所なのね。
今年もイタキス祭りが始まりました。現状を考えるとバースデーや結婚記念日ネタどころか更新頻度はかなり酷いと思われますが、期間中は何かしらあげる可能性はありますので気が向いたら当サイトもチェックしてみて下さい(^^;
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